チュートリアルコースの記録
2023年11月6日(月)、横浜
こまかすぎてつたわらない溶液NMRの実験法
宮ノ入 洋平(阪大蛋白研)
有機物の固体高速MAS測定の調整方法
西山 裕介(JEOL)
NMRを創った人たち:Rabi and Bloch −分子線NMRから凝縮系NMRへ−
寺尾 武彦(京大)
2022年11月7日(月)、高知
AX3スピン系は訳分からないけど、やはり「メチル基」様様
池上 貴久(横浜市立大学)
Qを上げると感度が良くなるのではなく、感度を良くするとQが上がるんです
武田 和行(京都大学)
計測手法としてのMRIをどのように使っていくか
拝師 智之(国際医療福祉大学)
NMRを創った人たち:第1話 夜明け前 [2] Isidor I. Rabi, 分子線磁気共鳴法の開発
寺尾 武彦(京都大学)
2020年11月17日(火)、群馬
社会に役に立つNMR/MRI
浅川 直紀(群馬大学)
高分解能固体NMRから得られる高分子構造情報-汎用性高分子、高分子液晶など-
山延 健(群馬大学)
In-situパルスNMR測定による結晶性高分子の構造解析
上原 宏樹(群馬大学)
2019年11月6日(水)、川崎
測定の不確かさ評価についての初歩
田中 秀幸(産業技術総合研究所 計量標準総合センター)
近年試験所認定の拡大とともに、不確かさ評価の重要性が増してきております。また,海外の論文誌では測定結果とともに不確かさも表記するように、との指摘がされることも増えてまいりました。そこで本講演では、なぜ不確かさが必要となったのか、不確かさとは何か、誤差との違いということから不確かさ評価の概要を説明し、定量NMR の測定の不確かさについて簡単に解説いたします。
錯体結晶の固体NMR
犬飼 宗弘(徳島大学大学院 社会産業理工学研究部)
近年、金属イオンと有機配位子から組み上がる無限骨格構造を持つ錯体結晶(配位高分子や金属有機骨格体とも呼ばれる)は、ガスの分離・貯蔵材料やイオン伝導体として優れた機能を有しており、次世代の機能性材料として注目されています。本講演では、結晶性固体の固体NMR 測定に興味があるNMR 初心者を対象に、錯体結晶の固体NMR 解析例を紹介します。一般的な錯体結晶の構造解析の方法として、単結晶X 線回折が挙げられます。しかし、X 線解析によって得られる結晶構造は、あくまでモデルであり、かつ平均構造です。固体NMR 解析によって得られた結晶骨格の運動挙動や局所構造の変化に関する情報を、結晶構造に付け加えることにより、動的な結晶構造の解析が可能となります。X 線回折やX 線吸収微細構造などのオーソドックスの分光法と固体NMR 分光法を組み合わせた動的な結晶構造の解析例、およびそれら動的な結晶構造が引き起こすプロトン伝導や二酸化炭素貯蔵能の機構解明の研究例を話します。
NMRを創った人たち:第1話 夜明け前
2. Rabi の分子線 NMR の成功と Gorter の凝縮系 NMR の失敗
寺尾 武彦(京都大学名誉教授)
教科書では、長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されていて、学問が創られた背景にある含蓄に富んだ話はすっかり削ぎ落とされている。しかし、先人たちが歴史的な研究に取り掛かったきっかけや鍵となるアイデアの着想の経緯、あるいは回り道やつまずきなど創造の過程で辿った軌跡を知ることは、我々にとって間違いなく貴重な財産になるであろう。そのためには、研究を行なった本人の経歴や人物像、研究が行なわれた時代背景、研究環境、周辺の人々の関わりや反応など、学問が創られるに至った状況を様々な角度から知ることも極めて重要である。本講演では、時代を画した研究を行った人物にスポットを当てて、できる限りその研究が成功するに至った道のりや、研究が行われた現場を、様々な文脈において多面的に蘇らせる。うまくいけば、おそらくはその人物の人間性や生き方に根ざしているであろう、研究に対する姿勢やものの考え方、奥深い想いが浮かび上がってくるかも知れない。その試みを通して、研究者として歩み出した若い人たちに、“ 科学する” とはどういうことなのかを物語全体から感じ取ってもらえれることを願っている。今回は、一昨年に引き続きBloch とPurcellに先立ってNMRを試みたRabi とGorterについて話す。
2018年9月17日(月)、札幌
NMRを創った人たち:第1話 夜明け前
2. Rabi の分子線 NMR の成功と Gorter の凝縮系 NMR の失敗
寺尾 武彦(京都大学名誉教授)
教科書では、長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されていて、学問が創られた背景にある含蓄に富んだ話はすっかり削ぎ落とされている。しかし、先人たちが歴史的な研究に取り掛かったきっかけや鍵となるアイデアの着想の経緯、あるいは回り道やつまずきなど創造の過程で辿った軌跡を知ることは、我々にとって間違いなく貴重な財産になるであろう。そのためには、研究を行なった本人の経歴や人物像、研究が行なわれた時代背景、研究環境、周辺の人々の関わりや反応など、学問が創られるに至った状況を様々な角度から知ることも極めて重要である。本講演では、時代を画した研究を行った人物にスポットを当てて、できる限りその研究が成功するに至った道のりや、研究が行われた現場を、様々な文脈において多面的に蘇らせる。うまくいけば、そらくはその人物の人間性や生き方に根ざしているであろう、研究に対する姿勢やものの考え方、奥深い想いが浮かび上がってくるかも知れない。その試みを通して、研究者として歩み出した若い人たちに、“ 科学する” とはどういうことなのかを物語全体から感じ取ってもらえれることを願っている。今回は、昨年に引き続きBloch と Purcellに先立って NMR を試みた Rabi と Gorter について話す。
より良いスペクトルを得るための基礎知識
朝倉 克夫(日本電子株式会社)
より良いスペクトルを得るために気をつけなければならにこととは何なのか、スペクトルの解釈に焦点があてられた大学の講義ではわからないことが多々ありますが、普段なにげなくおこなっている操作手順の中にも、最終的なスペクトルの質を左右する要素が含まれています。本講座では、NMR 装置を使いこなす上で美しいNMR スペクトルを得るために注意すべき点を、測定の準備からデータ処理の基礎に至るまで、その背景と共にご説明していきます。
低分子のNMRスペクトルの解析例
佐藤 一(ブルカージャパン株式会社)
いくつかの低分子量化合物を用いて、実際のNMR スペクトルを解析する例を紹介します。誤りなく、かつ、スムーズにシグナルの帰属を進めるために、複数個の二次元スペクトルを用いて、シグナルを関連付けながら解析していきます。
ナイトミッション『未知化合物Xの構造を推定せよ』低分子のルーチン法と、追加で使える測定法
福士 江里(北海道大学大学院農学研究院)
「ここに、構造のわからない化合物があります。NMR で構造を決めてください」との依頼があったという想定で、構造を一緒に考えていきます。低分子化合物のルーチン法による構造解析には定石がありますが、それだけでは構造推定が難しい場面にも遭遇します。その際には、追加で測定すると便利な「準」ルーチン法も併用して、明快な構造解析を目指しましょう。測定法のチョイスや解析の進めかたは状況によって変わります。工夫しながら構造決定に到達する喜びを共有し、低分子の解析になじみが薄い方にはきっかけとなるような、また、日ごろ解析をされている方には知識を整理し今後のお役に立てていただけるような時間にしたいと思います。
2017年11月13日(月)、東京
最適な測定を考える
八木 宏昌(理化学研究所)
溶液NMRの方法論は成熟期を向かえ、今やほとんどの測定は予め用意されたパラメータを読み込んでルーチンでおこなえるようになった。しかし、ふと立ち止まってみると、例えばHSQCを測定しようと思い標準測定法を呼び出してみると、同じHSQCなのに幾つもの測定法があるのに気づく。いったい何が違うのだろうかと考えてみたことはないだろうか?今回のチュートリアルコースでは、これらの基本的な違いを原理に基づき解説し、どういったときにどのような測定を行うのが最適なのかを、タンパク質の解析を例にとって、自らの経験を踏まえて紹介したい。NMR業界の現状を見渡すと必ずしも測定時間がふんだんに確保できるとは限らない 。限られた時間内でベストな測定をするには何に着目したら良いか? もしかしたら今より効率の良い測定法があるかもしれない。この機会に自分のルーチンを少し振り返ってみてはいかがでしょうか。
固体NMRにおける13C-13C間の偏極移動
大橋 竜太郎(金沢大学)
固体NMRは、X線回折や溶液NMRなどの測定法では構造解析が困難な試料にも適用できる測定法として期待されており、近年では膜タンパク質などの構造も解析できるようになっている。NMRでは、溶液NMRの1H-1H NOESY法に代表されるように、原子核間の距離情報から分子構造が解析される。固体NMRの場合は1Hよりも13Cの方が高分解能で測定が可能であるため、13C-13C間の距離情報を得るための測定法が盛んに研究されてきた。約10年前までは13C-13C間の距離は2つの炭素原子のみに限定した手法では13C-13C間の距離を正確に求められるが、3スピン以上の13C同士の距離を求めるためのブロードバンドな手法ではおおまかな距離しか求められなかった。しかし最近では、天然存在比の試料を用いて0.1Å以下の精度で13C-13C間の距離を決定したという報告例のようにブロードバンドな手法で求められる13C-13C間の距離の精度が上がってきており、固体NMRによる13C-13C間距離の測定法を用いた構造解析が今後より発展していくことが期待される。本講演では、ブロードバンドな測定法の中でも広く用いられているPDSD, DARRなどの1H-13C間の双極子相互作用を用いた13C-13C間の偏極移動について、偏極移動の基礎的な概念や偏極移動速度導出の概要などについて説明する。
NMRを創った人たち:第1話 夜明け前
2. Rabi の分子線 NMR の成功と Gorter の凝縮系 NMR の失敗
寺尾 武彦(京都大学名誉教授)
教科書では、長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されていて、学問が創られた背景にある含蓄に富んだ話はすっかり削ぎ落とされている。しかし、先人たちが歴史的な研究に取り掛かったきっかけや鍵となるアイデアの着想の経緯、あるいは回り道やつまずきなど創造の過程で辿った軌跡を知ることは、我々にとって間違いなく貴重な財産になるであろう。そのためには、研究を行なった本人の経歴や人物像、研究が行なわれた時代背景、研究環境、周辺の人々の関わりや反応など、学問が創られるに至った状況を様々な角度から知ることも極めて重要である。本講演では、時代を画した研究を行った人物にスポットを当てて、できる限りその研究が成功するに至った道のりや、研究が行われた現場を、様々な文脈において多面的に蘇らせる。うまくいけば、おそらくはその人物の人間性や生き方に根ざしているであろう、研究に対する姿勢やものの考え方、奥深い想いが浮かび上がってくるかも知れない。その試みを通して、研究者として歩み出した若い人たちに、“科学する” とはどういうことなのかを物語全体から感じ取ってもらえれることを願っている。今回は、Bloch と Purcell に先立って NMR を試みた Rabi と Gorter について話す。
2016年11月15日(火)、広島
フーリエ変換を工夫してNMRスペクトルをよみがえらせる
池上 貴久(横浜市立大学)
同じ測定データでも、どのようにフーリエ変換するかによって、スペクトルに大きな違いが生じることがあります。もちろん、プロセス法も考えておいたうえで測定パラメータを設定するのがよいのですが、もし間違えて測定してしまったとしても、フーリエ変換をなんとか工夫することによって、そのミスを少しでもカバーできればそれに越したことはありません。今回はプロセス用パラメータをブラックボックスとして使ってしまっているNMR初心者を対象に、プロセス法における工夫や個々の基本的なパラメータの意味について、できるだけ詳しく紹介したいと思います。
四極子核固体NMR法の基礎の基礎
山田 和彦(高知大学)
ほとんど全ての元素は固有の核スピン(I)を有する安定同位体を含んでいる。従って、原理的には周期表上のほとんどの元素がNMR測定の対象になるはずである。また、その八割程度は四極子核と呼ばれるI ≧ 1の核種であり、四極子モーメントを有している。そのため、周囲の電荷が創出する電場勾配と四極子モーメントの間で、核四極相互作用と呼ばれる静電的な核スピン相互作用が生じる。概して、NMRユーザーは1Hや13CなどI = 1/2の核種を測定対象とすることが多く、四極子核NMRを使用する機会は少ないかもしれない。これは、化学シフト相互作用や双極子−双極子相互作用などに比べて、核四極相互作用は線形に与える影響が大きいため、線幅が広がることを反映した結果と思われる。しかしながら、近年の技術的な進歩に伴って、それら難易度は確実に下がっており、NMR測定が可能な四極子核が増えてきた。そして、NMR法を応用できる研究分野は確実に広がってきている。このような背景から、従来からのNMRユーザーのみならず、これからNMR法を活用する研究者においても、四極子核を測定対象とするNMR法への関心が高まってきている(と思われる)。本講演では、これから四極子核NMRに挑戦するユーザーを対象に、四極子核NMRの基礎的理論やバックグランドを概説し、四極子核の代表格(核?)である酸素(17O)NMRを実例として、スペクトル解析の重要性について説明する。
NMRを創った人たち:第1話 夜明け前
1. SternとGerlach―偶然はいかに彼らに微笑んだか
寺尾 武彦(京都大学)
教科書では、長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されている。しかし、学問が創られた背景には、様々な味わい深い物語がある。研究対象の選択や鍵となるアイデアの着想の経緯、あるいは回り道やつまずきなど創造の過程で辿った軌跡を知ることは、学問を創る側に立とうとしている若い人々にとって素晴らしい財産となろう。研究を行なった本人の人物像、研究が行なわれた時代背景、研究環境、周辺の人々などもまた創造の物語を構成する重要な要素である。本講演では、時代を画した研究を行った人物にスポットを当て、可能な限りその研究が行われた現場を蘇らせる。その試みが研究者として歩みだした若い人たちにとって一つの道標になれば幸いである。今回は角運動量の方向量子化を発見し、陽子などの磁気能率を初めて測定してNMRが出現する土壌を培った先人の物語を話す。
2015年11月5日(木)、千葉
NMR 教科書のここがよく分からない
池上 貴久(横浜市立大学)
初学者は講義や教科書を通して NMR を学んでいきますが、そこに書かれた何気ない記述でつまづいてしまうことが多いです。例えば「溶液 NMR では、分子の回転拡散によりこのような dipolar 相互作用が平均化されて、ピークがシャープになる」などの記述です。「拡散がなぜ回転するの?平均化とは?なぜシャープになるの?product-operator のプロダクト(直積)って何?」このような疑問が学習の進行をそこで妨げているかもしれません。一方、熟練者の中にも、分からないままに放置して長い時を経てしまい、ある時に逆に初心者から尋ねられてドキッとする方がいるかもしれません。あるいは、「(3*cos^2(Θ)-1) を積分したら0になるでしょ」のような説明で済ましてしまっているかもしれません。今回はこのようなよく分からない教科書の記述を何点か採り上げ、これらをいつものように図で理解することを目指したいと思います。
固体NMRによる生体分子構造解析の最近の展開
川村 出(横浜国立大学)
固体NMR分光法は高分子や固体材料など幅広い分野で活躍している。近年、細胞膜中に存在する膜タンパク質やアミロイド線維など難解な生体分子について固体NMRを利用した構造決定の研究がいくつか成され、固体NMRによるプロテインデータバンク(PDB)への登録数も増加している。このような研究を支える測定技術と合わせて、具体的な最新の研究例を紹介し、解説する。
NMRはいかに創られたか: 9. MRI を中心に
寺尾 武彦 (京都大学)
教科書では長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されている。しかし、その行間には先人たちの汗と涙がにじみ、フィクションを超えるドラマが潜んでいる。本講演では時代を画したNMRの方法論の研究にスポットを当て、どのような時代背景の下でどういう人物が何をきっかけに歴史的な発想を得たのか、またどんな困難に出くわしてそれをどう解決して研究を完成させたかを人間的なエソードを交えて話す。若い方々が話を通じて優れた科学者の研究に取り組む姿勢や学問に対する情熱を学んで頂ければ幸いである。今回はMRIを中心に話す予定である。
2014年11月3日(月)、大阪
NMR法を基軸とした論文執筆
菊地 淳(理化学研究所)
世界人口急増の反面、超高齢化社会が形骸化しつつある足元を省みて、本コースへの参加者には難解なNMRの世界を勉強しても、将来にわたって持続的に利用できるか不安な人々がいるかもしれない。一方で学術論文を受理させ足元を固めていけば、学位取得、就職、転職、グラント獲得、あわよくば更にPI等での後進指導へと結びつき、こうした”NMRを基軸とした“人材の持続性が本学会の興隆をも左右するであろう。本講演では蛋白質・代謝物群・バイオマス・環境試料へとNMRを基軸とした論文執筆を続け、自らの職を切り拓いてきた演者の体験を基に、着想・行動・文書化の三要素関係の重要性を述べたい。結論から言えば将来の不安は実績の蓄積で解消され、また当人さえ予期せぬ未来も拓かれる。現状では研究者の実績評価軸は学術論文に重きがあり、良い文書は死後においても無形財産として評価され得る。その論文執筆において最も重要な段階は多様な論文との出会いでもあり、良い出会いが動機と着想を育み、重い腰を上げ、数多くの失敗を乗り越えた際には他者に報告(論文化)せずにはいられなくなる。
溶液NMR実験をデザインする楽しさ
竹内 恒(産業技術総合研究所)
NMRの魅力は、実験の目的に合わせてサンプルを安定同位体標識する段階から、標識に合わせたNMR実験の実施、測定後の処理に至るまで多くの自由度があり、様々な工夫が可能な点にあると思います。ここではそのような工夫を行った実例と応用例をいくつかお示ししながら、NMR実験をデザインする楽しさ、有効性をお伝えすることが出来ればと思っています。
NMRを1万倍高感度化する技術:DNP 〜その基礎原理から最新の応用研究まで〜
根来 誠(大阪大学)
動的核偏極(DNP: Dynamic Nuclear Polarization)は、誕生から60年かけてじっくりと発展を遂げた。現在では様々な試料において、極低温下でDNPを行うことで、通常のNMR分 光やMRIに 比べて一万倍程度高感度な測定が可能である。具体的には、ポリマー、リゾチーム、膜たんぱく質、ウイルス、薬品、アミロイド生成性ナノ結晶などの高感度分析、細孔物質の界面解析などへと適用されている。また、高偏極化した物質を溶かして体内に注射することで代謝イメージング、pHイ メージングが可能で、がん治療の効果判定にも応用されている。本講演では、DNPの 基礎原理について説明し、技術的側面における歴史的経緯に沿って上記の応用を紹介していく。また、試料を室温に保ったまま一万倍以上の高感度化が可能となる「トリプレットDNP」 の進展についても紹介する。
NMRはいかに創られたか: 8. 二次元FT-NMR
寺尾 武彦 先生 (京都大学 名誉教授)
教科書では長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されている。しかし、その行間には先人たちの汗と涙がにじみ、フィクションを超えるドラマが潜んでいる。本講演では時代を画したNMRの方法論の研究にスポットを当て、どのような時代背景の下でどういう人物が何をきっかけに歴史的な発想を得たのか、またどんな困難に出くわしてそれをどう解決して研究を完成させたかを人間的なエソードを交えて話す。若い方々が話を通じて優れた科学者の研究に取り組む姿勢や学問に対する情熱を学んで頂ければ幸いである。今回は二次元FT-NMRについて話す予定である。
2013年11月11日(月)、金沢
メチル基を通して巨大な分子を観る
池上 貴久(大阪大学蛋白質研究所 准教授)
たとえTROSY-CRIPTなどの測定法を使っても、蛋白質主鎖のアミド基ではもはや観測できないような大きな分子量を対象とすることに挑 戦がなされている。その鍵はメチル基を観ることである。一般的にメチル基は、その軸で速く回転し、さらに3つの1Hスピンの化学シフト値が重 なることのために感度が他の基よりも高くなることはよく知られていた。近年、それに加えて交差相関の働きにより、さらに横緩和が遅くなってい ることも実証され、Methyl-TROSYの名で知られるようになった。この現象を利用すると、巨大分子どうしの相互作用だけでなく、その 側鎖のダイナミクスも分かり、また、必ずしも帰属をしなくても、巨大な蛋白質のアロステリック効果に伴う構造変化なども追うことができるようになった。ここでは、それらの実験例とその原理について紹介したい。
NMRおよびGIPAW計算を用いた有機EL、有機太陽電池の解析
梶 弘典(京都大学化学研究所 教授)
NMRが、他の解析手法では得ることが困難なユニークかつ重要な情報を与えてくれることは、本学会の皆様はよくご存知のことと思う。本チュー トリアルでは、NMRを有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、有機太陽電池といった有機デバイスの解析に応用した例を紹介する。また、 最近、分子間相互作用を考慮した化学シフトの計算が可能となってきた。GIPAWと呼ばれるこの手法の応用例に関しても紹介したい。
NMRはいかに創られたか: 7. フーリエ変換NMR
寺尾 武彦(京都大学 名誉教授)
教科書では長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されている。しかし、その行間には先人たちの汗 と涙がにじみ、フィクションを超えるドラマが潜んでいる。本講演では時代を画したNMRの方法論の研究にスポットを当て、どのような時代背景 の下でどういう人物が何をきっかけに歴史的な発想を得たのか、またどんな困難に出くわしてそれをどう解決して研究を完成させたかを人間的なエ ソードを交えて話す。若い方々が話を通じて優れた科学者の研究に取り組む姿勢や学問に対する情熱を学んで頂ければ幸いである。今回はフーリエ 変換NMRについて話す予定である。
2012年11月7日、名古屋
2次元NMR:フ−リエ変換と共分散
竹腰 清乃理(京都大学大学院理学研究科 教授)
とある分子のNMR信号の帰属や合成高分子の単量体や生体高分子のアミノ酸・核酸の連鎖(2次元構造)から分子の3次元構造の決定、さらには、分子の運動やイメージングにと多次元NMR法の役割は大きい。本講義では、2次元交換NMR法を題材に、基礎原理と方法を解説する。また、発展として、その代表的な処理法であるフ−リエ変換と近年提案されてそのメリットが実感されつつある共分散法について比較紹介する。
MRIの基礎
巨瀬 勝美(筑波大学大学院数理物質科学研究科 教授)
MRIの開発により、NMRの測定対象は、溶液や固体試料などの試験管に入った試料から、構造を持った任意の形状を有する試料(生体など)へと大きく拡大した。そして、それまでの分子構造などに関する情報から、生体の解剖学的構造や、疾患等に伴う化学的・物理的な変化の空間的構造など、従来のNMR手法ではアクセスできない空間的情報も得ることができるようになった。また、MRIによる医用診断は、医療では不可欠なものとなっており、装置販売の市場だけでも、世界で年間3000億円を超えている。本稿では、MRIの一般的な紹介ではなく、NMR分光計を使用している研究者がMRIを始めるときに必要な知識などを中心に、MRIの解説を行う。
NMRはいかに創られたか: 6. 固体高分解能NMRその2
寺尾 武彦(京都大学 名誉教授)
教科書では長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されている。しかし、その行間には先人たちの汗と涙がにじみ、フィクションを超えるドラマが潜んでいる。本講演では時代を画したNMRの方法論の研究にスポットを当て、どのような時代背景の下でどういう人物が何をきっかけに歴史的な発想を得たのか、またどんな困難に出くわしてそれをどう解決して研究を完成させたかを人間的なエソードを交えて話す。若い方々が話を通じて優れた科学者の研究に取り組む姿勢や学問に対する情熱を学んで頂ければ幸いである。今回は昨年に引き続き固体高分解能NMRについて話す予定である。
2011年11月15日、横浜
図で見る新しいNMR手法の原理
池上 貴久(大阪大学蛋白質研究所)
この15年間に、さまざまなNMRの手法が開発され、解析に使われてきた。例えば、残余双極子相互作用RDC(残余化学シフト異方性)、常磁性緩和PRE、常磁性シフト(pseudo-)contact-shift、アミドやメチルTROSY、交差相関緩和CCR、緩和分散法relaxation-dispersion、高速測定法(non-uniform-sampling, projection-NMR, single-scan-NMRなど)とMEMなどのプロセス法、動的核分極法DNP、saturation-transfer法などが挙げられる。その中には、もはや新規とは思えない程に日常の解析に多用されている方法もあるが、日頃の忙しさに邪魔され、その物理的な原理までをも勉強するのはなかなか難しい。ここでは、出来るだけ数式を使わずに、「イメージ」でその原理をとらえ、今後のより深い理解の端緒となるようにしたい。
天然物有機化学におけるNMR
松森 信明(大阪大学大学院理学研究科 准教授)
タンパク質のNMR解析といえば主に立体配座解析であるが、天然有機化合物のNMR解析では、平面構造の決定、ついで立体配置の決定へと進み、最後にオプションとして立体配座解析が来る。平面構造の決定はほぼルーチン化しているが、NMRによる立体配置決定は今でも容易ではない。そこで今回のチュートリアルコースでは、NMRによる天然有機化合物の立体配置決定について主に解説する。相対立体配置の決定法には、我々の報告したJ-based configuration analysis法やハーバード大の岸教授らによるuniversal NMR database法がある。また、ご存知の方も多いかもしれないが、絶対立体配置決定法として、楠見教授らによる新モッシャー法を紹介する。さらに時間があれば、膜作用性天然有機化合物について、バイセルを用いた膜環境下での立体配座解析についても紹介したい。
NMRはいかに創られたか: 5. 固体高分解能NMRその1
寺尾 武彦(京都大学 名誉教授)
教科書では長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されている。しかし、その行間には先人たちの汗と涙がにじみ、フィクションを超えるドラマが潜んでいる。本講演では時代を画したNMRの方法論の研究にスポットを当て、どのような時代背景の下でどういう人物が何をきっかけに歴史的な発想を得たのか、またどんな困難に出くわしてそれをどう解決して研究を完成させたかを人間的なエソードを交えて話す。若い方々が話を通じて優れた科学者の研究に取り組む姿勢や学問に対する情熱を学んで頂ければ幸いである。 今回は固体高分解能NMRのうち特にcross polarization法について話す予定である。
2010年11月14日、東京
溶液NMR解析技術:基礎から最新技術まで
伊藤 隆(首都大学東京大学院理工学研究科 教授)
溶液NMRの方法論の進歩と成熟に伴って、私たちがNMR解析を行うために必要な知識は少しずつ変化している。今回のチュートリアルコースでは、今NMRをはじめる研究者の立場に立ち、生体高分子の解析を例にとって、まず溶液NMR解析技術(試料調製から高次構造解析等まで)の現状を概説し、必要とされる基礎知識を紹介したい。次に、最近注目を集めている新たなトピックやNMR討論会で実際に発表される演題から興味深いものを何点か取り上げ、わかりやすく紹介したい。
固体NMR最新手法の基礎と応用
内藤 晶(横浜国立大学大学院 工学研究院 教授)
固体NMRの手法は、溶液状態ではなく、異方的な相互作用が支配的な系や状態に対して有効である。すなわち、固体材料や高分子の物性研究、生体高分子の構造機能相関の研究に応用が広がっている。この固体NMRの最新の手法について理論的背景からその応用にわたる範囲を実際の研究例に基づいて解説する。具体的には「静止試料の磁気相互作用の解析」「MAS試料の磁気相互作用の解析」「原子間距離測定」「各種固体多次元NMR」の内容に関する最近の技術の進歩を取り上げて、固体NMR分光法の基礎から応用にわたる実験法を、具体的な研究例を紹介しながら解説する。
NMRはいかに創られたか: 4. パルスNMR法の出現
寺尾 武彦(京都大学 名誉教授)
教科書では長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されている。しかし、その行間には先人たちの汗と涙がにじみ、フィクションを超えるドラマが潜んでいる。本講演では時代を画したNMR の研究にスポットを当て、どのような時代背景の下でどういう人物が何をきっかけに歴史的な発想を得たのか、またどんな困難に出くわしてそれをどう解決して 研究を完成させたかを人間的なエピソードを交えて話す。今回は Hahnにまつわる話を中心にパルスNMR法の出現に焦点を当てる。若い方々が話を通じて科学するということがどういうことなのかを感じ取って頂 ければ幸いである。
2009年11月9日、福岡
基礎から理解する溶液NMRの最新技術
廣明 秀一(神戸大学大学院医学研究科 特命教授)
NMRの魅力は、理論自体はかなり古くに完成されているにもかかわらず、方法論としてはいまだに完成されたものではなく、毎年何らかの進歩と発見が見られることである。本セミナーでは、まずNMR初学者やNMRを使い始めた別分野の研究者ために、NMRの基礎と溶液NMR法の持つ特徴を概説し、その後、近年注目を集めている以下のトピックについてなるべくわかりやすく紹介する。
(1) sofast-NMR / best-NMR、(2) in-cell NMR、(3) NMR metabolomics、(4) LC-NMR
固体NMRの方法
藤原 敏道(大阪大学 蛋白質研究所 教授)
分子運動性が制約されている固体状態の試料に適用するNMR法とその分子構造解析への応用について解説する。内容としては、固体状態における核磁気相互作用の特徴、試料回転やラジオ波磁場の変調を用いた相互作用の制御など実験技術、スペクトルから得られる分子構造や運動性についての情報、データ解析法、さらに同位体試料の調製法などを紹介する。これらのことを、タンパク質など生体分子系などへの最近の応用例をまじえて示す。これらを通じて固体NMR法の特長、ユニークさ、課題、将来について言及する。
NMRはいかに創られたか: 3. 誕生から新たな展開へ
寺尾 武彦(京都大学 名誉教授)
教科書では長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されている。しかし、その行間には先人たちの血と汗と涙がにじみ、フィクションを超えるドラマが潜んでいる。本講演では時代を画したNMRの研究にスポットを当て、どのような時代背景の下でどういう人物が何をきっかけに歴史的な発想を得たのか、またどんな困難に出くわしてそれをどう解決して研究を完成させたかを人間的なエピソードを交えて話す。今回は PurcellらによるNMRの発見とパルスNMR法の出現に焦点を当てる。若い方々が話を通じて科学するということがどういうことなのかを感じ取って頂ければ幸いである。
2008年11月11日、つくば
児嶋 長次郎「溶液NMRの最新技術」
溶液NMRの基盤技術の中で最近急激に進歩しているものを選び、基礎から最先端技術(最新論文)までを概説します。また、NMR討論会で実際に発表される演題から興味深いものを何件か取り上げ、そのバックグラウンドと研究内容を簡単に紹介します。現時点で予定している内容は以下のようなものです。「最新ハードウエアの動向」「溶液条件下での感度増強法」「超分子の溶液NMR技術」「NMRサンプルの調製法―パラ水素標識と安定同位体標識」。これら以外にも可能な限り新しいNMR技術を紹介します。
内藤 晶 「固体NMR最新手法の基礎と応用」
固体NMR分光法は固体材料や高分子の物性研究、さらには生体分子の構造や運動性の決定に広く使われている。この最近の固体NMR手法について理論的背景からその応用にわたる範囲を実際の研究例を紹介して解説する。具体的には「静止試料の磁気相互作用の解析」「MAS試料の磁気相互作用の解析」「原子間距離測定」「各種固体二次元NMR」の内容をカバーする最近の生体関連分子に関する研究論文を取り上げて固体NMR分光法の基礎から応用にわたる項目を研究例を紹介しながら解説する。
寺尾 武彦 「NMRはいかに創られたか: 2. NMRの誕生」
教科書では長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果を簡潔に整理し、系統的に淡々と記述されている。しかし、その裏には先人たちの血のにじむ ような努力やフィクションを超えるドラマが潜んでいる。本講演では時代を画したNMRの研究にスポットを当て、どのような時代背景の下でどういう教育 ・研究歴を持った人物が何をきっかけに歴史的な発想を得て、どんな困難に出くわしてそれをどう解決して研究を完成させたかを人間的なエピソードを交えて話す。今回はBlochらおよびPurcellらによるNMRの発見に焦点を当てる。若い方々が話を通じて科学を研究するということはどういうことなのか を感じ取って頂ければ幸いである。
2007年9月10日、札幌
児嶋 長次郎「溶液NMRの最新基盤技術」
溶液NMRの基盤技術のうち最近急激に進歩しているものを選び、基礎から最先端技術(最新論文)までを概説します。現時点で予定している内容は、以下のようなものです。「最新ハードウエアの動向」「周波数スペクトルを得るためのデジタルデータ処理の基礎」「多次元NMR高速測定法のすべて」「NMRサンプルの調製法―タンパク質の選択標識を中心に」
他にNMR討論会で実際に発表される演題から興味深いものを何件か取り上げ、そのバックグラウンドと研究内容を簡単に紹介します。
池上 貴久 「溶液NMRの最新技術の生体分子への応用」
現在のところ、ご紹介する予定としての研究題材は、以下のようなものです。「遅い運動性を検出するための緩和速度の解析」「残余双極子相互作用のさらなる展開」「回転拡散の異方性によるドメイン間の相対配置(運動)の決定」「常磁性金属を利用しての構造の動的性質の検出」「交差相関緩和による相互作用する交換系での二面角度情報の取得」「スピン状態選択的磁化移動(TROSY)の発展」
また、NMR討論会で実際に発表される演題から興味深いものを何点か取り上げ、ご紹介したいと思います。昨年度は「難解」であったという感想を踏まえ、今回は院生も対象とすることを想定し、いずれの題材も、最初に簡単な原理の解説を、後にその応用例としての論文をご紹介します。(まだ予定ゆえ、多少の変更につきましては、ご容赦ください)。
寺尾 武彦 「NMRはいかに創られたか」
教科書では長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果を簡潔に整理し、系統的に淡々と記述されている。しかし、その裏には先人たちの血のにじむような努力や映画顔負けのドラマが潜んでいる。本講演では時代を画したNMRの研究にスポットを当て、どのような時代背景の下でどういう教育・研究歴を持った人物が何をきっかけに歴史的な発想を得て、どのような困難に出くわしてどのように解決して研究を完成させたかを可能な限り掘り起こし、人間的なエピソードを含めて述べる予定である。今回はNMRの発見前後に焦点を当てる。若い方々が話しの中から“科学する”ということはどういうことなのかを感じ取って頂ければ幸いである。
2006年11月21日、京都
『NMRの最先端』
寺尾 武彦 | 「NMRの高感度化」 |
竹腰清乃理 | 「固体高分解能NMR」 |
瀬尾 芳輝 | 「MRI」 |
菊地 淳 | 「in vivo NMRとメタボミクス」 |
三島 正規 | 「構造生物学における溶液NMR」 |
池上 貴久 | 「溶液NMRの新技術」 |