日本核磁気共鳴学会

第9期会長のご挨拶

日本核磁気共鳴学会会員の皆様へ

新たな時代の日本核磁気共鳴学会

日本核磁気共鳴学会の第9期会長を拝命してはや2年目の秋を迎えました。この間に平成から令和へと時代は移り、本学会にとってもいくつかの大きな出来事がありました。

まず、昨年9月に北海道を襲った巨大地震の影響で、札幌で開催が予定されていた第57回NMR討論会が中止となりました。被災された地域の方々に改めてお見舞い申し上げます。私を含めて参加を楽しみにされていた会員の皆様にとっては大変残念な事態でありましたが、世話人の出村 誠先生の並々ならぬご尽力により、学会運営の混乱を最小限に留めることができました。ご英断に敬意を表するとともに、討論会の運営に関わられた皆様に改めて御礼申し上げます。

そして悲しいことでありますが、昨年の秋から春にかけてお二人の名誉会員の先生方の訃報に接しました。昨年10月にはNMR討論会を創始された藤原鎭男先生がご逝去され、そして3月には本学会初代会長をつとめられました荒田洋治先生が鬼籍に入られました。我が国の核磁気共鳴研究の黎明期よりその開拓と発展に多大な貢献をされ、本学会の設立にも深く関わられた先生方のご功績を偲び、改めて哀悼の意を表します。

このように本学会にとっては厳しい出来事が続きましたが、新しい時代の訪れとともに新たな息吹をもたらす活動も活発化しつつあります。木川隆則先生が世話人として準備を進められている第58回NMR討論会は、初めての試みとして電子スピンサイエンス学会との連合大会として開催されます。これは、再来年8月に大阪で開催される国際会議に向けての布石としての意味合いもあります。この国際会議は、第60回NMR討論会と第60回電子スピン学会年会に加えて、第22回国際磁気共鳴学会会議(ISMAR)と第9回アジア太平洋NMRシンポジウム(AP NMR)の合同会議として開催を予定しています。それに向けて、ISMAR組織委員長の藤原敏道先生、AP NMR組織委員長の内藤 晶先生を中心に、まさにオールジャパンの体制で開催に向けての準備が進められており、第60回NMR討論会世話人の片平先生は合同年会全体のプログラム委員長としてもご尽力されています。会員の皆様におかれましても、世界の磁気共鳴研究者が集結するこの一大イベントに是非奮ってご参加いただき、国際的な交流を深める機会としていただけましたら幸いです。

また改めて申すまでもなく、若手の研究活動を支援し、次世代を担う研究者を育成することは本学会の重要な役割です。日本核磁気共鳴学会では、若手の一層の活躍を願い、従来の若手ポスター賞、渡航費助成に加えて、NMRに関する研究成果が特に優れ、将来性が期待される若手研究者を顕彰する新たな取り組みを企画しつつあります。私は、今年8月のはじめに開催された第20回若手NMR研究会に講師として参加いたしました。そこで、全国から集った若手がNMR研究の新たな方向性を模索し、異分野の若手研究者も交えて夜遅くまで車座になって熱く語り合っている姿を目の当たりにし、その輪の中に加えてもらいました。情報通信技術の進展は、日々の研究はもとより、将来的には学会のあり方にも大きく影響を与えることが予想されます。このたびの研究会を通じて、若手の皆さんの沸き立つアクティビティを頼もしく思うとともに、人と人とをつなぐ学会の役割について改めて深く考える機会を得ました。

このように未来につながる新たな胎動を感じる高揚感を会員の皆様と分かちつつ、新しい時代を迎えた日本核磁気共鳴学会の発展に微力を尽くしていきたいと思います。引き続き、ご支援の程よろしくお願い申し上げます。

2019年仲秋

日本核磁気共鳴学会
会長 加藤 晃一