チュートリアルコース

チュートリアルコース

本コースについて

好評を得ているチュートリアルコースを、本年も討論会に先立ち開催します。
今年度は3名の先生方にレビューして頂く予定です。
学生・若手研究者を主な対象としていますが、一般の方の参加も歓迎します。参加費は無料です。


概要

会期 2017年11月13日(月)
会場 首都大学東京・南大沢キャンパス・国際交流会館1F大会議室
(〒192-0397 東京都八王子市南大沢1-1)
講師 八木 宏昌 先生 (理化学研究所)
大橋 龍太郎 先生 (金沢大学)
寺尾 武彦 先生 (京都大学名誉教授)

下記のリンクより参加登録を行ってください。

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プログラム

1. 八木 宏昌 先生 (理化学研究所)
「最適な測定を考える」
溶液NMRの方法論は成熟期を向かえ、今やほとんどの測定は予め用意されたパラメータを読み込んでルーチンでおこなえるようになった。しかし、ふと立ち止まってみると、例えばHSQCを測定しようと思い標準測定法を呼び出してみると、同じHSQCなのに幾つもの測定法があるのに気づく。いったい何が違うのだろうかと考えてみたことはないだろうか?今回のチュートリアルコースでは、これらの基本的な違いを原理に基づき解説し、どういったときにどのような測定を行うのが最適なのかを、タンパク質の解析を例にとって、自らの経験を踏まえて紹介したい。NMR業界の現状を見渡すと必ずしも測定時間がふんだんに確保できるとは限らない 。限られた時間内でベストな測定をするには何に着目したら良いか? もしかしたら今より効率の良い測定法があるかもしれない。この機会に自分のルーチンを少し振り返ってみてはいかがでしょうか。
2. 大橋 龍太郎 先生 (金沢大学)
「固体NMRにおける13C-13C間の偏極移動」
固体NMRは、X線回折や溶液NMRなどの測定法では構造解析が困難な試料にも適用できる測定法として期待されており、近年では膜タンパク質などの構造も解析できるようになっている。NMRでは、溶液NMRの1H-1H NOESY法に代表されるように、原子核間の距離情報から分子構造が解析される。固体NMRの場合は1Hよりも13Cの方が高分解能で測定が可能であるため、13C-13C間の距離情報を得るための測定法が盛んに研究されてきた。約10年前までは13C-13C間の距離は2つの炭素原子のみに限定した手法では13C-13C間の距離を正確に求められるが、3スピン以上の13C同士の距離を求めるためのブロードバンドな手法ではおおまかな距離しか求められなかった。しかし最近では、天然存在比の試料を用いて0.1Å以下の精度で13C-13C間の距離を決定したという報告例のようにブロードバンドな手法で求められる13C-13C間の距離の精度が上がってきており、固体NMRによる13C-13C間距離の測定法を用いた構造解析が今後より発展していくことが期待される。本講演では、ブロードバンドな測定法の中でも広く用いられているPDSD, DARRなどの1H-13C間の双極子相互作用を用いた13C-13C間の偏極移動について、偏極移動の基礎的な概念や偏極移動速度導出の概要などについて説明する。
3. 寺尾 武彦 先生 (京都大学名誉教授)
「NMR を創った人たち: 第1話 夜明け前
2. Rabi の分子線 NMR の成功と Gorter の凝縮系 NMR の失敗」
教科書では、長年にわたって積み重ねられた多数の研究成果が系統的に整理され、簡潔に淡々と記述されていて、学問が創られた背景にある含蓄に富んだ話はすっかり削ぎ落とされている。しかし、先人たちが歴史的な研究に取り掛かったきっかけや鍵となるアイデアの着想の経緯、あるいは回り道やつまずきなど創造の過程で辿った軌跡を知ることは、我々にとって間違いなく貴重な財産になるであろう。そのためには、研究を行なった本人の経歴や人物像、研究が行なわれた時代背景、研究環境、周辺の人々の関わりや反応など、学問が創られるに至った状況を様々な角度から知ることも極めて重要である。本講演では、時代を画した研究を行った人物にスポットを当てて、できる限りその研究が成功するに至った道のりや、研究が行われた現場を、様々な文脈において多面的に蘇らせる。うまくいけば、おそらくはその人物の人間性や生き方に根ざしているであろう、研究に対する姿勢やものの考え方、奥深い想いが浮かび上がってくるかも知れない。その試みを通して、研究者として歩み出した若い人たちに、“科学する” とはどういうことなのかを物語全体から感じ取ってもらえれることを願っている。今回は、Bloch と Purcell に先立って NMR を試みた Rabi と Gorter について話す。